神のことばは無効になったのか

前回の箇所で、イスラエルには7つの特権が与えられていることを学びました。それにもかかわらず、イスラエルはメシアを拒否しました。当然湧いてくる疑問は、「では、神の約束、計画は、挫折ざせつしたのではないか」というものです。これは、私たちにとっても重大問題です。もし神の約束が100％成就しないなら、全面的に神を信頼することは難しくなります。パウロは、この疑問に答えようとします。

2つのイスラエル

「しかし、神のみことばが無効になったわけではありません。なぜなら、イスラエルから出る者がみな、イスラエルなのではなく、」（6節）。（1）「無効になる」は、ギリシア語で「エクピプトウ」です。基本的な意味は、「コースから外れる」ということです。（2）パウロは、「なぜなら、イスラエルから出る者がみな、イスラエルなのではなく、」と言い、次に、神のことばが今も有効であることの理由を説明します。
ここからパウロは、神の選びについての説明を開始し、それが11章の終わりまで続きます。（1）「イスラエルから出る者」とは、民族的イスラエルのことです。彼らは、アブラハム、イサク、ヤコブの子孫です。（2）「イスラエルなのではなく」の「イスラエル」とは、霊的イスラエル（真の信仰者）のことです。（3）よくある誤解は、この聖句を「イスラエルと教会の対比」と取ることです。あるいは、「イスラエルと異邦人の対比」と取る人もいます。しかし、これらの解釈は文脈上成り立たないものです。ここで教えられているのは、民族としてのイスラエルの中に、少数の信仰のあるイスラエルが存在するということです。肉体的にイスラエル人であれば受ける祝福もありますが、霊的祝福（救い）は、信仰のあるイスラエル人にのみ与えられます。（4）信仰のあるイスラエルの呼称には、種々のものがあります。霊的イスラエル、神のイスラエル（ガラ6：16）、レムナント（残りの者）、まことのイスラエル人（ヨハ1：47）などがそうです。
イスラエル人全員がつまずいたのではありません。不信仰になったのは、一部のイスラエル人で、信仰を持ったイスラエル人はいつの時代にも存在していました。そして、今もメシアニック・ジューと呼ばれる人たちが存在しています。神の約束は必ず成就します。それが私たちクリスチャンの確信です。