第5 戒（12 節）

「あなたの父と母を敬え。あなたの神、【主】が与えようとしておられる地で、あなたの齢が長くなるためである」。モーセの律法は、両親を敬うことの重要性を強調している。その背後にある考え方は、次のようなものである。（1）両親を敬うことは、神の立てた秩序と権威に従うことである。両親に反抗する者は、神に反抗する人生を歩むようになる可能性が大きい。（2）両親を敬うことは、謙遜を学ぶことでもある。自分だけで生きている人はいない。傲慢ごうまんは、身の破滅をもたらす。（3）この戒いましめには約束が伴っている。「あなたの神、【主】が与えようとしておられる地で、あなたの齢が長くなるためである」。これは、個人的な長寿の約束というよりも、イスラエルの民が約束の地で平安の内に長く住むようになるという約束である。（4）イエスご自身も、この箇所を引用しておられる。「神は『あなたの父と母を敬え』、また『父や母をののしる者は死刑に処せられる』と言われたのです」（マタ15：4、マコ7：10 も参照）

私たちへの適用

パウロは、エペソ6：1 〜 3 でこう書いている。「子どもたちよ。主にあって両親に従いなさい。これは正しいことだからです。『あなたの父と母を敬え』。これは第一の戒めであり、約束を伴ったものです。すなわち、『そうしたら、あなたはしあわせになり、地上で長生きする』という約束です」。（1）彼は「第一の戒め」という言葉を使っているが、これは、約束が伴った第一の戒めという意味である。（2）今の時代（恵みの時代）は、モーセの律法の役割は終了しているが、第5 戒と同じ内容の命令が「キリストの律法」にも含まれている。つまり、新約時代の聖徒たちにも、両親を敬えという命令が与えられている（家庭内暴力の被害を受けている子が、一時的に親と距離を置くことは、第6 戒違反とはならない。距離を置いても、両親への敬意を維持することは可能である）。（3）エペソ6 章の文脈から、以下のことを学ぶことができる。①結婚生活は、キリストと教会の関係の投影（表れ）である。②親子関係もまた、主への献身の投影でなければならない。③子どもは神への献身の表れとして両親を敬う。④両親もまた神への献身の表れとして子どもたちを訓練する。
こう見て来ると、親子ともに、神からの命令と使命とが与えられていることが分かる。親子関係が祝されるように祈ろう。そのために自分は何をなすべきか、黙想してみよう。