ダビデの子

今までは、ユダヤ人の指導者たちがイエスに難問を投げかけてきたが、この箇所では、逆にメシアであるイエスがパリサイ人たちに質問をしている。「あなたがたは、キリストについて、どう思いますか。彼はだれの子ですか」。パリサイ人たちは、「ダビデの子です」と答えた。旧約聖書の預言では、メシアはダビデの子孫として生まれるとなっている。そのため、メシアの称号として「ダビデの子」が用いられるようになった。ここまでは、パリサイ人たちにとっては常識であった。
それを聞いたイエスは、次に難問を投げかけた。イエスは詩篇110：1 を引用し、こう問いかけた。「それでは、どうしてダビデは、御霊によって、彼を主と呼び、『主は私の主に言われた。「わたしがあなたの敵をあなたの足の下に従わせるまでは、わたしの右の座に着いていなさい」』と言っているのですか。ダビデがキリストを主と呼んでいるのなら、どうして彼はダビデの子なのでしょう」。イエスの質問を要約してみると次のようになる。① メシアは、「ダビデの子」と呼ばれている。② ところが、ダビデはそのメシアのことを「私の主」と呼んでいる。③ もしメシアが「ダビデの子」であるなら、ダビデは彼のことを「私の子」と呼ぶべきではないか。なぜダビデはそうは呼ばないで、「私の主」と言っているのか。

沈黙するパリサイ人たち

イエスのこの質問には、だれも一言も答えることができなかった。なぜなのか。それは、ラビ的ユダヤ教の欠点をイエスが指摘されたからである。パリサイ人たちは、メシアが「ダビデの子」であることは認めていた。「ダビデの子」とは、メシアの人性を指す称号である。しかし彼らは、メシアの神性は認めていなかった。そのため、ダビデがメシアを「私の主」と呼んでいる理由が理解できなかったのである。メシアは、人であり神である。それを理解できなかったところに、ラビ的ユダヤ教の限界がある。
私たちは、メシアであるイエスが人性と神性を兼ね備えた方であることを信じている。イエスは「ダビデの子」（人性）であると同時に、「ダビデの主」（神性）である。このことをユダヤ人たちは理解することができなかった。イエスは、十字架にかかる前にあらゆる角度から攻撃を受け、吟味された。そして、完璧な神の小羊であることが証明された。いま主イエスに礼拝を捧ささげよう。主イエスは、神が人となられたお方である。私たちが救われるべき名としては、この御名しか与えられていない。