31 彼は言った。「何をあなたにあげようか。」ヤコブは言った。「何も下さるには及びません。もし次のことを私にしてくださるなら、私は再びあなたの羊の群れを飼って、守りましょう。
32 私はきょう、あなたの群れをみな見回りましょう。その中から、ぶち毛とまだら毛のもの全部、羊の中では黒毛のもの全部、やぎの中ではまだら毛とぶち毛のものを、取り出してください。そしてそれらを私の報酬としてください。
33 後になってあなたが、私の報酬を見に来られたとき、私の正しさがあなたに証明されますように。やぎの中に、ぶち毛やまだら毛でないものや、羊の中で、黒毛でないものがあれば、それはみな、私が盗んだものとなるのです。」
34 するとラバンは言った。「そうか。あなたの言うとおりになればいいな。」
ヤコブがラバンと労務契約を結ぼうとしている。これまでの経緯を考えると、ヤコブは高賃金を要求してもおかしくない立場にいる。ラバンの家畜が爆発的に増えたのは、ヤコブが忠実に働いた結果である。しかしヤコブは、驚くほど控え目な要求をする。(1)ラバンは、報酬の前払いを覚悟していたようであるが、ヤコブは、前払いをしなくてもよいと告げる。(2)さらにヤコブは、一つの条件をのんでくれるなら、ラバンのもとに留まり続けると約束する。その条件とは、以下のものである。「私はきょう、あなたの群れをみな見回りましょう。その中から、ぶち毛とまだら毛のもの全部、羊の中では黒毛のもの全部、やぎの中ではまだら毛とぶち毛のものを、取り出してください。そしてそれらを私の報酬としてください」。・ ぶち毛とまだら毛のもの全部。これは、総論的言葉である。ぶち毛とは、「黒の中に白点がある」個体、まだら毛とは、「白の中に黒点がある」個体のことであろう。・ 黒毛の羊全部。中東の羊は、通常は白である。黒い羊は珍しい。・ まだら毛とぶち毛のやぎ。中東のやぎは、通常は黒か濃い茶色である。まだら毛とぶち毛のやぎは、珍しい。
以上の3 種類は、数が少ない。従って、ヤコブの要求は実に控え目なものだと言える。しかもヤコブは、それらの家畜から生まれてくる子羊や子やぎだけを要求したのである。
(1)ヤコブには、もっと大胆な要求を出す権利があった。しかし彼は、最低限のところからスタートすることを選んだ。その上、自分の正直さを示す方法まで提示した。「後になってあなたが、私の報酬を見に来られたとき、私の正しさがあなたに証明されますように。やぎの中に、ぶち毛やまだら毛でないものや、羊の中で、黒毛でないものがあれば、それはみな、私が盗んだものとなるのです」。(2)ラバンは、自分に有利な条件なので、すぐに同意した。「そうか。あなたの言うとおりになればいいな」(新改訳)。「よろしい。お前の言うとおりにしよう」(新共同訳)
ヤコブは、通常言われるような陰険な人物ではない。彼は勤勉で、開拓者精神を持った信仰者である。最低からのスタートをよしとする彼の姿勢から、何を学ぶことができるか黙想してみよう。隣人のものを欲しがる必要はない。私たちにはこの確信があるからである。「万軍の【主】はわれらとともにおられる。ヤコブの神はわれらのとりでである」(詩46:7)
きょうの祈り
アブラハム、イサク、ヤコブの神よ。神を恐れかしこみつつ歩むことができますように。最低のところからスタートする信仰を私に与えてください。主イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン。
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