第6 の側面

「モーセの律法は、人を信仰へと導く力となる」。これが、モーセの律法の第6の側面である。このことについて、パウロは次のように教えている。「･･･律法は私たちをキリストへ導くための私たちの養育係となりました。私たちが信仰によって義と認められるためなのです」（ガラ3：23 〜24）。（1）律法は、わざによる救いが不可能であることを人に示す。つまり、律法を行うことによって義とされるのは不可能だということである。（2）その結果、人は信仰による救いを求めるようになる。（3）最終的には、人は律法によって、キリストに対する信仰へと導かれる。「養育係」というのは家庭教師のことで、当時のローマ世界では、貴族は子弟の教育ために家庭教師を雇うことが普通に行われていた。パウロはその習慣を例にとって、モーセの律法は私たちをキリストに導く家庭教師のようなものであると教えたのである。
ここで、犠牲の動物の意義について考えてみよう。（1）旧約時代の聖徒たちにとって、犠牲の動物を捧げることは救いの方法ではなかった。（2）彼らは、モーセの律法によって、自らの罪を認識するようになった。（3）罪の解決策として神が用意された方法が「血の犠牲」で、これは、イスラエルの民に与えられた恵みの一つである。（4）イスラエルの民が犠牲の動物を捧げるのは、罪の赦しの必要性を認識したからであり、それは信仰による行為なのである。

適用

さて、子どもが成人すると、家庭教師の役目は終了する。それと同じように、キリストが現れた今は、家庭教師としての律法の役割は終わった。キリストに対する信仰を持った者は、霊的な成人になったのである。それゆえ、ユダヤ人であっても異邦人であっても、律法に回帰することは、再び家庭教師の世話になろうとする愚おろかなことなのである。
霊的な成人とは、聖霊によるバプテスマを受け、キリストにつく者とされた人々である。「なぜなら、私たちはみな、ユダヤ人もギリシヤ人も、奴隷も自由人も、一つのからだとなるように、一つの御霊によってバプテスマを受け、そしてすべての者が一つの御霊を飲む者とされたからです」（1 コリ12：13）。ローマ時代の成人は、トーガという上着を着用した。そのように、霊的成人となった私たちは、「キリストをその身に着た」のである。古い自分に戻ることのないように、きょうも聖霊とともに歩むことを志そう。