第1 の側面

十戒の内容に入る前に、モーセの律法の7 つの側面について考えてみよう。この学びによって、モーセの律法の体系的な理解が可能になる。
第1 の側面は、「モーセの律法は、救いの方法ではない」というものである。つまり、神がイスラエルの民に律法を与えた理由は、それによって彼らを救うためではないということである。（1）モーセの律法は、シナイ契約の条項である。シナイ契約が締結ていけつされた時の状況を見てみよう。イスラエルの民は、すでにエジプトから解放されていた。神がイニシアティブを取って行動し、彼らをエジプトでの奴隷状態から救い出されたのである。そのことを前提に、イスラエルの民にモーセの律法が与えられた。（2）もしモーセの律法が救いの方法であるなら、それは「わざによる救い」となる。創世記15：6 は、アブラハムの義認について教えている。「彼は【主】を信じた。主はそれを彼の義と認められた」。信仰義認の原則が、聖書を貫つらぬく唯一の救いの方法である。（3）創世記で確認された信仰義認の原則が、それよりも後から出て来たモーセの律法によって無効になることはない。律法を行うことで義とされるという考え方は、聖書のどこにもない。

適用

人は、次のような方法で救われる。（1）救いの方法は、「信仰により恵みによって」である。「人が義と認められるのは、律法の行いによるのではなく、信仰によるというのが、私たちの考えです」（ロマ3：28）。この原則は、旧新約聖書を貫く不変の原則である。（2）信仰の対象は、「神」である。私たちは、天地の創造主、私たちの造り主であるお方を信じる。（3）信仰の内容は、「時代によって異なる」。神の啓示は、時間の経過とともに積み重なって来た。これを漸進的ぜんしんてき啓示という。各時代の人々が救われるために信じなければならない内容とは、その時代までに啓示されていた内容そのものである。アブラハムが義とされたのは、キリストの贖あがないを信じたからではなく、自分の子孫が星の数のようになるという神の約束を信じたからである。（4）救いの土台は、「キリストの死」である。つまり、神が信仰により、恵みによって罪人を義とされるのは、キリストの死という土台があるからである。
今の私たちが信じなければならない信仰の内容は、「福音の三要素」である。キリストが自分の罪のために死なれたこと、墓に葬ほうむられたこと、三日目に甦られたことを信じるなら、その人は救われている。