ヨナのしるし

律法学者とパリサイ人たちが、「先生。私たちは、あなたからしるしを見せていただきたいのです」と声を上げた。「もっと多くのしるしを見ないと、あなたがメシアであることは信じられない」という意味である。しかしイエスは、ご自身のメシア性を証明する「しるし（奇跡きせき）」を、すでにいくつも行っていた。そこでイエスは、「しるし」に関して新しい方針を採用すると応答された。（1）イエスは、「悪い、姦淫の時代はしるしを求めています」と、その不信仰を嘆なげかれた。（2）次に、これ以降は、メシア性を証明する奇跡としては、「預言者ヨナのしるし」以外には与えられないと宣言された。「ヨナのしるし」とは、「復活」のことである。預言者ヨナは、大魚の腹の中で3 日3 晩過ごし、その後、陸地に向かって吐はき出された人物である。（3）「ヨナのしるし」には、3 つのものがある。① 死んで4 日も経ってから起こったラザロの蘇生そせい。② 死後3 日目に起こったイエスの復活。③ そして、黙示録11 章に出てくるふたりの証人の復活。
福音書を読むと、これ以降もイエスは数々の「しるし（奇跡）」を行われたが、その目的は変化した。それらの奇跡は、イエスのメシア性を証明するためのものではなく、12 使徒を訓練するためのものとなった。12 使徒たちは、将来の奉仕ほうしに備そなえて、イエスから訓練を受けたのである。

悪い姦淫の時代

さらにイエスは、同時代のイスラエル人たちを糾弾きゅうだんされた。「今の時代の人々」という言葉が何度も出てくることに注目しよう。前回学んだように、彼らは、「赦されない罪」を犯した人々、つまり、イエスのメシア性を拒否したイスラエル人たちである。信仰を示した異邦人の例が、2 つ上げられている。①ニネベの人々は、ヨナが語る裁きの説教を聞いて、悔い改めた。②南の女王（シェバの女王）は、ソロモンの知恵を聞くために地の果てからやって来た。つまり、これらの異邦人たちは、わずかばかりの光（啓示けいじ）に応答したのである。しかし「今の時代の人々」は、イエスという、よりすばらしい光があるのに、それに対して信仰によって応答しようとはしなかった。信仰のある異邦人いほうじんの存在は、しるしを求める人々（悪い姦淫の時代）を有罪とするのに十分なものである。
「信じるために、もっと、しるしを」と叫びたくなることがあるかもしれないが、主イエスの十字架と復活こそ、私たちに与えられた十分なしるしである。このしるしを通して、主イエスを救い主として受け入れた人は幸いである。