1 すると、アグリッパがパウロに、「あなたは、自分の言い分を申し述べてよろしい」と言った。そこでパウロは、手を差し伸べて弁明し始めた。
2 「 アグリッパ王。私がユダヤ人に訴えられているすべてのことについて、きょう、あなたの前で弁明できることを、幸いに存じます。
3 特に、あなたがユダヤ人の慣習や問題に精通しておられるからです。どうか、私の申し上げることを、忍耐をもってお聞きくださるよう、お願いいたします。
4 では申し述べますが、私が最初から私の国民の中で、またエルサレムにおいて過ごした若い時からの生活ぶりは、すべてのユダヤ人の知っているところです。
5 彼らは以前から私を知っていますので、証言するつもりならできることですが、私は、私たちの宗教の最も厳格な派に従って、パリサイ人として生活してまいりました。
6 そして今、神が私たちの父祖たちに約束されたものを待ち望んでいることで、私は裁判を受けているのです。
7 私たちの十二部族は、夜も昼も熱心に神に仕えながら、その約束のものを得たいと望んでおります。王よ。私は、この希望のためにユダヤ人から訴えられているのです。
8 神が死者をよみがえらせるということを、あなたがたは、なぜ信じがたいこととされるのでしょうか。
アグリッパはフェストからの許可を得たので、パウロに「あなたは自分の言い分を申し述べてよろしい」と語りかけた。パウロは、「手を差し伸べて」弁明し始めた。これは、当時の弁舌家が取る姿勢である。腕が鎖につながれているので、よりドラマチックな印象を与えたことであろう。(1)パウロはアグリッパに敬意を表し、「あなたがユダヤ人の慣習や問題に精通しておられるからです」と語っているが、これは単なる社交辞令ではなく、事実である。ユダヤ人の歴史家ヨセフスは、アグリッパがユダヤ教に精通していたと記している。(2)パウロは、「私の申し上げることを、忍耐をもってお聞きくださるよう、お願いいたします」と言った。これは、これから語る証言は、手短なものではなく詳細なものだという予告である。(3)パウロは、自分がユダヤ教の最も厳格な派に従ってパリサイ人として生活していたことは、多くの人によく知られている事実であると論じる。
次にパウロは、自分が裁判を受けている理由を解説する。その内容は、彼の神学的確信を表明するものでもある。(1)彼は、ユダヤ教とキリスト教の連続性を信じている。つまり、イエス・キリストの福音は、旧約聖書で預言されていたことの成就だというのである。(2)また、ユダヤ人たちが待ち望んでいた希望は、メシアであるイエスにあって成就したと信じている。「メシア的希望」はきわめてユダヤ的なものだが、その希望のゆえに彼はユダヤ人たちから訴えられているのである。ここに皮肉(アイロニー)がある。(3)「私たちの十二部族は、夜も昼も熱心に神に仕えながら、その約束のものを得たいと望んでおります」。パウロは、北の10 部族が失われているとは思っていない(マタ19:28、ルカ22:30、ヤコ1:1、黙7:4 ~ 8、21:12 参照)。(4)「神が死者をよみがえらせるということを、あなたがたは、なぜ信じがたいこととされるのでしょうか」。「あなたがた」とは、その場にいた聴衆のことで、異邦人たちである。ここでパウロは、異邦人にイエス・キリストの復活を宣べ伝えようとしている。
使徒の働きの中には、パウロの弁明が5 回出て来るが、今回の弁明が最後で、最も詳細な内容となっている。パウロは、あらゆる機会を用いて主イエスを宣べ伝えた。その結果、多くの人々に良き知らせがもたらされた。パウロの宣教の姿勢から教訓を学ぼう。求道者と出会わせてくださいと祈ろう。
きょうの祈り
イエス・キリストの父なる神さま。どうか、私も、あらゆる機会を用いて福音を宣べ伝えることができるよう導いてください。主イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン。
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