魔術師シモンの信仰

「シモン自身も信じて、バプテスマを受け、いつもピリポについていた。そして、しるしとすばらしい奇蹟が行われるのを見て、驚いていた」。（1）シモン自身も信じて、バプテスマを受けた。①シモンが救われたのかどうか、断定はできない。その後の展開を見ると、その信仰が真実なものとは思えない。信じると言っても、いろんな信じ方がある。②シモンは、ピリポに付き従うようになった。シモンの変えられた姿は、これまで彼に従っていた人々に大きな影響を与えたことであろう。（2）シモンは、「しるしとすばらしい奇蹟が行われるのを見て、驚いていた」。①ユダヤ教は、魔術師が悪魔の力によって奇跡を行うということを認めていた。②しかし、魔術師が発揮する力は、限定的なものであるとも考えていた。③シモンは、ピリポが発揮する神の力（限定的ではない力）の素晴らしさに驚いていた。
この時点では、まだ2 つの問題が残されている。①シモンの信仰は本物なのか。②サマリヤ人の救いをエルサレム教会は認定するのか。次回、この2 つの問題を取り上げる。

神のマスタープラン

サマリヤ人の救いは、神のマスタープランの中に最初から含まれていた。それを確認してみよう。
（1）イエスによるサマリヤ人伝道（ヨハ4：7 ～ 42）。①サマリヤの女が回心した。②サマリヤの女が伝道者になった。③町の人たちは信じた。「そして彼らはその女に言った。『もう私たちは、あなたが話したことによって信じているのではありません。自分で聞いて、この方がほんとうに世の救い主だと知っているのです』」（ヨハ4：42）。
（2）10 人のツァラアト患者の癒いやし（ルカ17：15 ～ 18）。癒された10 人の中で、感謝するために戻って来たのは、1 人のサマリヤ人だけであった。
（3）イエスの宣教命令（使1：8）。①エルサレムとユダヤ（ユダヤ人伝道）。②サマリヤの全土（サマリヤ伝道）。③地の果て（異邦人伝道）。①と②の間にあるバウンダリーを越えるのは、ピリポである。②と③の間にあるバウンダリーを越えるのは、ペテロである。
イエスは、最大のバウンダリーを越えてくださった。それは、神と罪人の間にあるバウンダリーである。それゆえ、イエスを信じる私たちも、「神の国とイエス・キリストの御名について」宣べ伝えるのである。