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使徒の働き8:9 ~ 13

9 ところが、この町にシモンという人がいた。彼は以前からこの町で魔術まじゅつを行って、サマリヤの人々をおどろかし、自分は偉大な者だと話していた。

10 小さな者から大きな者に至るまで、あらゆる人々が彼に関心をいだき、「この人こそ、大能たいのうと呼ばれる、神の力だ」と言っていた。

11 人々が彼に関心を抱いたのは、長い間、その魔術に驚かされていたからである。

12 しかし、ピリポが神の国とイエス・キリストの御名みなについてべるのを信じた彼らは、男も女もバプテスマを受けた。

13 シモン自身も信じて、バプテスマを受け、いつもピリポについていた。そして、しるしとすばらしい奇蹟きせきが行われるのを見て、驚いていた。

サマリヤ人伝道(3)

魔術師シモン

「ところが、この町にシモンという人がいた。彼は以前からこの町で魔術を行って、サマリヤの人々を驚かし、自分は偉大な者だと話していた」。(1)ピリポは神の力で奉仕をしていたが、魔術師シモンは悪霊の力で動いていた。彼のゴールは、人々を驚かすことであった。彼は、「偉大な者」(some great one)と自称していた。(2)シモンに関しては、種々の伝承がある。グノーシス主義の創始者である。ローマに行って、キリスト教の教理を曲げた(最初の異端を作り出した)。ペテロと奇跡コンテストを演じ、敗れた。いずれも確証のないものだが、このような伝承が生まれるほど、彼は後世に強烈な印象を残したのである。
「小さな者から大きな者に至るまで、あらゆる人々が彼に関心を抱き、『この人こそ、大能と呼ばれる、神の力だ』と言っていた。・・・」。「この人こそ、大能と呼ばれる、神の力だ」とは、驚くべき言葉である。人々が、シモンは神性を有していると考えたかどうかは明らかではないが、少なくとも、シモンは「神の力」の化身であると考えていたのであろう。一番の問題は、シモンがそのような賞賛しょうさんを喜んで受け取っていたことである。神のしもべは、賞賛を受けることを嫌悪けんおする。
「しかし、ピリポが神の国とイエス・キリストの御名について宣べるのを信じた彼らは、男も女もバプテスマを受けた」。(1)「神の国」とは、メシア的王国(千年王国)のことである(使1:3、6 参照)。「イエス・キリストの御名について宣べる」とは、イエス・キリストは神の国の王であるというメッセージを語ったということである(サマリヤ人も、イエスを信じることでメシア的王国の市民となれる)。(2)シモンは、悪霊の力によって関心を自分に集め、人々を驚かせたが、ピリポは、神の力によって関心をイエスに向けさせ、人々を回心に導いた。その結果、「男も女もバプテスマを受けた」。彼らは、信じた証しとして洗礼を受けた(すでに割礼を受けていたので、洗礼だけでユダヤ教に改宗することができた)。(3)ここで起こっていることは、まさに奇跡である。サマリヤ人にとっては、ユダヤ人のメシアを信じるのは、裏切り行為である。ユダヤ人にとっては、サマリヤ人も救われると教えるのは、裏切り行為である。
ステパノは、福音の普遍性ふへんせいを論じたために迫害されたが、ピリポも同じ神学的危険をおかしたのである。しかし、神の御心に従うなら、そこには必ず祝福が待っている。

きょうの祈り

天の父なる神さま。私の役目も、人々の心を主イエスに向けさせることです。賞賛ではなく、救いを求めます。きょうも御心に歩ませてください。主イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン。

年間聖書通読

エゼキエル書28~29、エペソ人への手紙4