ユダヤ人たちの無知（17 ～ 18 節）

「ですから、兄弟たち。私は知っています。あなたがたは、自分たちの指導者たちと同様に、無知のためにあのような行いをしたのです」。（1）ここからペテロの語り口が変化する。訳語としては、「ですから」ではなく「さて」（新改訳2017）がよい。「イスラエルの人々」という呼びかけが、「兄弟たち」に変わっていることに注目しよう。ペテロは、親密な関係に基づく奨励しょうれいを開始している。（2）民は、指導者たちとともにイエスを拒否し、異邦人に引き渡した。その原因は、「無知」にある。無知が原因で不信仰に陥るという教えは、ホセ4：6 にも見られるものである。（3）しかし、ユダヤ人たちが無知のためにイエスを拒否したと言えるだろうか。イエスは、数々のしるしを行い、ご自身がメシアであることを証明されたではないか。それでも、ユダヤ人たちは、イエスが受肉した人であることを認めなかったのである。その理由は、メシアは勝利の王として来られると信じていたからである。彼らは、イエスを詐欺師さぎしと考えた。彼らは、初臨のメシアが受難のしもべであることに関して無知であった。（4）無知で犯した罪は赦される。民数記15：22 ～ 31 には、あやまって罪を犯した場合の規定がある。イエスの祈りも、この線に沿ったものである。「父よ。彼らをお赦しください。彼らは、何をしているのか自分でわからないのです」（ルカ23：34）（パウロの教えに関しては、1 コリ2：8 を参照）。
「しかし、神は、すべての預言者たちの口を通して、キリストの受難をあらかじめ語っておられたことを、このように実現されました」。ユダヤ人たちとは異なり、神は知識を持って行動された。ユダヤ人の無知と神の知識が対比されている。①キリストの受難は、預言者たちの口を通して預言されていた。②キリストを苦しめたのはユダヤ人たちであったが、そのユダヤ人たちに対して、キリストはご自身を主、救い主として提示された。③それゆえ、ユダヤ人たちは、キリストを通して罪の赦しを受けることが出来る。
私たちが犯した罪に対する神の赦しの素晴らしさを黙想しようではないか。次回は、悔い改めについて学ぶ。私たちの心を、神に向けようではないか。