60 そこで大祭司が立ち上がり、真ん中に進み出てイエスに尋ねて言った。「何も答えないのですか。この人たちが、あなたに不利な証言をしていますが、これはどうなのですか。」
61 しかし、イエスは黙ったままで、何もお答えにならなかった。大祭司は、さらにイエスに尋ねて言った。「あなたは、ほむべき方の子、キリストですか。」
62 そこでイエスは言われた。「わたしは、それです。人の子が、力ある方の右の座に着き、天の雲に乗って来るのを、あなたがたは見るはずです。」
63 すると、大祭司は、自分の衣を引き裂いて言った。「これでもまだ、証人が必要でしょうか。
64 あなたがたは、神をけがすこのことばを聞いたのです。どう考えますか。」すると、彼らは全員で、イエスには死刑に当たる罪があると決めた。
65 そうして、ある人々は、イエスにつばきをかけ、御顔をおおい、こぶしでなぐりつけ、「言い当ててみろ」などと言ったりし始めた。また、役人たちは、イエスを受け取って、平手で打った。
前回に続いて、イエスの裁判の様子を取り上げます。すでに触れたように、イエスの裁判は二段階で行なわれました。今行なわれているのは、冒涜罪を立証し、イエスを死刑にするためのサンヘドリン(ユダヤ議会)による宗教裁判です。この裁判を指揮しているのは、大祭司カヤパです。これで死刑が確定すると、次はローマ人の法廷での政治裁判に持ち込まれます。さて、イエスはここまで全く沈黙しています(黙秘権が認められていました)。ところが、それに業を煮やしたカヤパは、神の御名によって証言することを命じます。カヤパは、「あなたは、ほむべき方の子、キリスト(メシア)ですか」と問います。以下、イエスの答です。(1)そのとおりである。(2)その証拠に、人の子(メシア)は父なる神の右の座に着く。(3)さらに、天の雲に乗って来る。以上は、イエスの昇天と再臨の預言となっています。
これ以降、数々の律法違反が続きます。(1)大祭司が衣を引き裂くのは、律法違反です。(2)訴訟を指揮している大祭司が、自分の判断を差しはさむのは律法違反です。しかし彼は、証人もなしに、「神をけがすことばを聞いた」と断じています。(3)通常は、有罪判決があって3日後に、量刑が決まります。しかしこの時は、議員たち全員で「死刑に当たる罪がある」と決めています。これもまた、律法違反です。(4)本来、全会一致の決定は認められていませんでした。そうなるのは、事前工作があったと推測されるからです。全会一致の場合は、無罪が宣告されました。イエスの裁判では、この規定も無視されています。(5)議員たちは、イエスの顔につばきをかけ、こぶしでなぐりつけ、平手で打っています。これらの行為は、すべて罰金刑に値します。しかし、罰金が課されたという記録はありません。
イエスの裁判には、正義も秩序もありませんでした。一刻でも早く死刑を宣言したいだけでした。王の王である方を裁くとは、なんと愚かで、恐れ多いことでしょうか。私たちもまた、王であるイエスを平気で裁いているような時があります。霊の目が開かれ、イエスの前にひざまずく者とされるように、祈りましょう。
きょうの祈り
イエス・キリストの父なる神さま。イエスは主であり、王の王です。どうか私が、イエスを裁くような愚かなことをすることのありませんように、知恵と霊的な目を与えてください。主イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン。
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