挿入句

パウロのあいさつ文の学びが続いています。今回は6回目です。本来なら、1節の次は7節に飛ぶのが自然です。ギリシア語の語順では、「神の福音」という言葉は1節の最後に出て来ます。パウロの性格は、一度火が付くとその方向に夢中になって走ることです。彼は、「神の福音」という言葉を口にしたとたん、その説明を始めています。それが2 〜 6節ですが、これはあいさつ文の中の「挿入句そうにゅうく」に当たります。しかし、単なる挿入句ではなく、福音の内容の要約です。飾りもののような挿入句ではなく、ロマ書でパウロが語ろうとしていることの要約です。これは、美しい対句ついく法になっています。すでに存在していた賛美である可能性があります。

神の福音

（1）福音の作者は、神です。そしてそのテーマは、「神の義」です。ロマ書は、「神の義」をテーマに読む必要があります。序言じょげん（1：1〜17）自体が、「神の義の啓示」がテーマとなっています。（2）神が福音を作り、それを人にゆだね、それを伝える資格を人に与えました。天使ではなく、人が福音を伝える責任を負ったのです。このことは重い真理です。（3）パウロは、「神の福音のために選び分けられた」器です。パウロには、「神の代理人」としての資格が与えられました。これが、ローマのクリスチャンたちに対する説得力となります。（4）「神の福音のために選び分けられた」という概念は、新約聖書の啓示が完成するまでの時代、きわめて重要なものでした。それは、「使徒たちの教え」となって私たちに伝えられました。以下の聖句を参考にしましょう。「そして、彼らは使徒たちの教えを堅く守り、交わりをし、パンを裂き、祈りをしていた」（使2：42）。「それは、聖なる預言者たちによって前もって語られたみことばと、あなたがたの使徒たちが語った、主であり救い主である方の命令とを思い起こさせるためなのです」（2 ペテ3：2）
神がその作者である福音は、人が修正を加えたり改善したりできないものです。修正や改善は、考えるだけでも恐れ多いことです。パウロは、選び分けられ、召されたという事実の重みを実感しながらロマ書を書いています。福音に対して私たちが取るべき態度とは、以下のものです。神の福音→使徒たち→新約聖書→私たちはそのまま信じる。神の福音はそのまま信じるに値するものであることを確認し、キリストにある平安を受け取りましょう。