飢えたエサウ

（1）ヤコブが煮物を煮ているとき、エサウが飢え疲れて野から帰ってきた。彼は非常に疲れていたが、死ぬほどの状態ではなかった。彼は、煮物を見ると、「どうか、その赤いのを、そこの赤い物を私に食べさせてくれ。私は飢え疲れているのだから」と言った。「食べさせてくれ」という動詞は、「グイグイ飲む」、「あおる」といった意味である。彼の動物的な食欲が暗示あんじされている。（2）エサウは「煮物」という言葉は使わずに、「赤いのを、そこの赤い物を」と言っている。ヘブル12：16 は、彼に関して「俗悪ぞくあくな者」という評価ひょうかを下している。（3）このエピソードのゆえに、彼は「エドム（赤）」と呼ばれるようになった。そして、その子孫しそんたちは先祖の性質を引き継つぐことになる。

ヤコブの提案

「するとヤコブは、『今すぐ、あなたの長子の権利を私に売りなさい』と言った」。（1）ヌジ文書では、長子の権利は売買可能であった。（2）長子の権利の内容を分解すると、以下の4 つになる。① 物質的祝福（2 倍の分け前。申21：17）、② 霊的祝福（祭祀さいしを仕切る権利）、③ メシアの系図に連つらなるという祝福（アブラハム契約に基づく長子の権利）、④ 土地の所有。（3）「エサウは、『見てくれ。死にそうなのだ。長子の権利など、今の私に何になろう』と言った」。彼は、自分の状態を誇張こちょうしている。また、彼には霊的祝福への興味きょうみがなかった。（4）「それでヤコブは、『まず、私に誓いなさい』と言ったので、エサウはヤコブに誓った。こうして彼の長子の権利をヤコブに売った」。この取引は、「誓い」によって法的に有効なものとなった。（5）「ヤコブはエサウにパンとレンズ豆の煮物を与えたので、エサウは食べたり、飲んだりして、立ち去った。こうしてエサウは長子の権利を軽蔑したのである」。ヤコブは長子の権利のための代価を払い、エサウはそれを受け取った。この取引に関して、ヤコブが不正を働いたという表現は、どこにもない。むしろ聖書は、エサウの非を責せめている。「エサウは長子の権利を軽蔑した」。「軽蔑した」とは、価値のないものとして扱あつかったということである。エサウには、神の御心みこころをキャッチする感受性がなかった。
私たちはどうか。ヘブル12：16 ～17 は、「エサウのような俗悪な者がないようにしなさい」と教えている。自分が何を第一にしているのか、吟味ぎんみしてみよう。霊的感受性は、みことばの学びと継続した祈りによって育つものである。