特別な洪水

　箱舟の完成とともに、大洪水が襲って来ようとしていた。「わたしは今、いのちの息あるすべての肉なるものを、天の下から滅ぼすために、地上の大水、大洪水を起こそうとしている。…」（17 節）。（1）「大洪水」と訳されている言葉は、ヘブル語で「ハ・マブール（The Flood）」という。これは、ノアの洪水だけを指す特別な言葉である（ここ以外に詩篇29：10 だけに出てくる）。ノアの洪水が特別な洪水である理由は、水が全世界を覆うからである。（2）新約聖書では、ノアの洪水を表すギリシア語は「カタクルースモス」である（マタ24：39、ルカ17：27、2ペテ2：5、3：6 参照）。（3）大洪水の目的は、動物と鳥と人間を滅ぼすことである。その中には、魚は含まれていない。水による裁きなので、魚は死なないからである。

契約

　「しかし、わたしは、あなたと契約を結ぼう。あなたは、あなたの息子たち、あなたの妻、それにあなたの息子たちの妻といっしょに箱舟に入りなさい」（18 節）。（1）ここで、ノア契約が予告される（内容は9 章で明らかになる）。（2）箱船に入る順番は、ノア、息子たち、ノアの妻、息子たちの妻である。（3）次に、すべての動物を2 匹ずつ入れるようにという命令が下る（19 ～20 節）。鳥、動物、地をはうものが、種類に従って、集められる。（4）ノアが走り回って動物を集めたのではない。動物たちが自分からノアのところに集まって来たのである。（5）箱舟に入った動物たちが7 万5,000 種類いたとしても、箱舟のスペースは60 パーセントしか埋うまらない。恐竜のような大動物の場合は、子どもの状態で箱舟に入ったのであろう。（6）残りの40 パーセントのスペースは、昆虫、食物の貯蔵ちょぞう、人間の居住、などのために用いられた。
　動物たちは、神の超自然的支配によって集まって来たが、食料を用意するのはノアの仕事であった。そしてノアは、「すべて神が命じられたとおりにし、そのように行った」（22 節）。つまり彼は、同世代の者とは異なり、神に忠実だったのである。同世代の者たちは、神の裁きが下るというノアのメッセージを信じようとしなかった。そんなことが起こるはずはないと考えたからである。この状況は、今も変わっていない。罪に対する神の裁きは必ずやって来ると私たちが語っても、人々は信じようとはしない。私たちのメッセージがこの世の人たちから歓迎されることを期待してはならない。私たちの使命は、忠実に語り続けることである。