イスラエルと共にいる神

　イスラエルの民が特別な民である理由は、神が彼らと共におられるからである（出33：15 参照）。ここでモーセは、神の恵みを強調するために、その事実を再確認している。
　（1）「さあ、あなたより前の過ぎ去った時代に尋ねてみるがよい。神が地上に人を創造された日からこのかた、天の果てから天の果てまで、これほど偉大なことが起こっただろうか･･･」。これは、神がシナイ山においてイスラエルの民に語りかけたことを指している（出19 〜20 章）。このようなことを体験したのは、イスラエルの民だけである。（2）「あるいは、あなたがたの神、【主】がエジプトにおいて、あなたの目の前であなたがたのためになさったように、試みと、しるしと不思議と、戦いをもって、また力強い御手と伸ばされた御腕と、恐ろしい力をもって、一つの国民をほかの国民の中から取り、ご自分のものにされた神がかつてあっただろうか」。これは、出エジプトの出来事を指している（出12 〜14 章）。（3）「主はあなたの父祖たちを愛し、その後の子孫を選んでいたので、ご臨在の中、大いなる力をもってあなたをエジプトから導き出された」。神がイスラエルの民にこのことをなさったのは、彼らに神の愛と恵みを教えるためであった。この愛と恵みは、先祖たち（族長たち）に示されていたものである。

従順を要求する神

　ここでモーセが「父祖たち」に言及している理由は、彼らが【主】の恵みに対して信仰によって応答したからである。特に、アブラハムの生涯は模範的なものであった（創15：6 参照）。モーセの五書全体を通して強調されているのは、信仰によって神に応答することの重要性である。「今日あなたは、上は天、下は地において【主】だけが神であり、ほかに神はいないことを知り、心にとどめなさい。今日、私が命じる主の掟と命令を守りなさい･･･」。（1）イスラエルの民は、【主】が唯一の神であることを認めなければならない。（2）さらに、神の恵みへの応答として、神の命令を守らなければならない。（3）以上の2 つのことを行うなら、彼らは約束の地で繁栄することができる。
　クリスチャン生活の原理も、これと同じである。私たちは、信仰と恵みによって救われた。神への従順は、キリストにあって神が私たちに示された愛への応答なのである。愛が動機になっていなければ、すべての宗教的行為は空しい。