マルコにのみある奇跡

イエスは盲人の手を取って、村の外に連れて行かれました。その理由は、この奇跡によってご自身のうわさが広まることを嫌われたからです。ベツサイダはガリラヤ湖畔にある有力な村の1つでした。その村で有名になれば、たちまちガリラヤ地方一帯にイエスのうわさが広がります。奇跡が行なわれた後、イエスがその人に、村に入って行かないように命じておられるのも同じ理由からです。
さて、この奇跡は2つの段階を経て起こっています。（1）第一段階でイエスは、その両眼につばきをつけ、両手を当てて、何か見えるかと聞いておられます。盲人はその時に見えるようになりましたが、その癒しは部分的でした。（2）第二段階でイエスは、再度彼の両眼に手を当てておられます。すると、彼の目は完全に治り、すべてのものが鮮明に見えるようになりました。

霊的適用

この奇跡には霊的適用があります。（1）次回学ぶ箇所で、弟子たちはイエスが約束のメシアであることを告白しています。弟子集団の代表となったのがペテロで、彼は、「あなたは、キリストです」と告白しています。しかし、彼らのメシア理解はまだ不十分なものでした。彼らの霊的な目が完全に開かれるのは、ペンテコステの体験（使徒の働き2章）をしてからです。（2）第2の霊的適用は、イスラエルに関するものです。パウロは、ローマ人への手紙11：25～26でこう語っています。「イスラエル人の一部がかたくなになったのは、異邦人の完成のなる時までであり、こうしてイスラエルはみな救われる」。イスラエル人の中には、どの時代にあっても、「イスラエルの残れる者」と呼ばれる真の信仰者の群が存在していました。つまり、イスラエル人の一部だけが霊の目が開いていたということです。しかし、やがてすべてのイスラエル人の霊的な目が開かれる時が来ます。
この霊的真理を私たちにも適用してみましょう。私たちはイエスを信じて、霊の目が開かれた状態になりました。しかしそれはまだ不完全であり、やがていつか完全に主を見る時がやってきます。「今、私たちは鏡にぼんやり映るものを見ていますが、その時には顔と顔とを合わせて見ることになります」（Iコリント13：12）。