理由①：すべての権威は神によって立てられているから

ロマ書13章は、二重国籍を持った者たちへの命令です。クリスチャンは、天と地上に国籍を持っています。パウロは、「人はみな、上に立つ権威に従うべきです」（1節a）と命じています。当時、ローマ帝国内でのキリスト教会は、非常に弱々しいものでした。そういう状況下にあって、パウロは国家権力に従順であるようにと命じたのです。
彼は、従順であるべき理由を3つ上げています。第一の理由は、「すべての権威は神によって立てられているから」というものです。「神によらない権威はなく、存在している権威はすべて、神によって立てられたものです」（1節b）。（1）この言葉の背後には、箴言8：15があります。「わたしによって、王たちは治め、君主たちは正義を制定する」。旧約時代から、この世の支配者たちは神によって立てられているという認識があったのです。（2）主イエスも、これと同じ認識を持っておられました。「イエスは答えられた。『もしそれが上から与えられているのでなかったら、あなたにはわたしに対して何の権威もありません。ですから、わたしをあなたに渡した者に、もっと大きい罪があるのです』」（ヨハ19：11）。（3）そこで、私たち信者は次のことを知らなければなりません。いかなる方法で権威が誕生したかは、問題ではありません。現代の民主主義国家では、選挙という方法によって指導者が決まります。古代には別の方法で権威が誕生したのです。いずれにしても、国家権力は、民に安全と祝福をもたらすための神の方法なのです。

2節

「したがって、権威に逆らっている人は、神の定めにそむいているのです。そむいた人は自分の身にさばきを招きます」。（1）ここで教えられているのは、権威に逆らうことは神の定めにそむくことである、ということです。（2）そむいた人は、自分の身にさばきを招きます。「さばき」の前に定冠詞ていかんしの「the」がありませんので、これは、必ずしも終末的なさばきではありません。地上生涯においてすぐに起こる「さばき」のことです。
自分が権威というものに対してどのような姿勢を取ってきたか、吟味してみましょう（地上の権威が神に敵対した場合のことは、先に行ってから取り上げます）。神に対する不従順が、地上の権威に対する反発として表現されていないかどうか、内省ないせいしてみましょう。