9 これはノアの歴史である。ノアは、正しい人であって、その時代にあっても、全き人であった。ノアは神とともに歩んだ。
10 ノアは三人の息子、セム、ハム、ヤペテを生んだ。
11 地は、神の前に堕落し、地は、暴虐で満ちていた。
12 神が地をご覧になると、実に、それは、堕落していた。すべての肉なるものが、地上でその道を乱していたからである。
「これはノアの歴史である」(9 節)。この箇所から、創世記の第3 区分(トルドット)が始まる(6:9 ~9:29)。ノアの霊性に関しては、「ノアは、正しい人であって、その時代にあっても、全き人であった。ノアは神とともに歩んだ」(9 節)とある。(1)「正しい人」はヘブル語で「ツァディク」である。これは、「義認、内面の義、救い」などを意味する言葉で、ノアの内面の性質を表したものである。(2)「全き人」はヘブル語で「タミム」である。これは「無垢人、傷のない人」という意味で、ノアの外面的行為を表したものである。ちなみに、レビ記1:3、10、3:1、6 などでは、犠牲の動物に関して「タミム」という言葉が、「傷のない」という意味で使われている。(3)「その時代にあっても」とあるが、「時代(世代)」が複数形になっている。つまり、ノアはアダム以来の10 世代の中で最も義なる人だということである。(4)ノアが「正しい人」、「全き人」と呼ばれる理由は、「主の前に恵みを得た」(8 節)ことの結果である。ノアは、業によってではなく、信仰によって義とされたのである。(5)「ノアは神とともに歩んだ」とは、神の命令に従ったという意味で、創世記5:22 ~24 でエノクについて語られていることと同じである(ヘブ11:7 参照)。
「地は、神の前に堕落し、地は、暴虐で満ちていた」(11 節)。これは創世記の著者(モーセ)の視点である。創世記6:1 ~4 の雑婚によって地は堕落し、その結果暴虐(不法)で満ちていた。
「神が地をご覧になると、実に、それは、堕落していた。すべての肉なるものが、地上でその道を乱していたからである」(12 節)。これは神の視点である。神が地をご覧になると、全地は実に堕落していた。この言葉によって、サタンの妨害がいかに成功していたかが分かる。それが洪水を起こさねばならなかった理由である。
ノアの時代の人たちは実に堕落していたが、今の時代の人たちはどうか。人々が神を無視し、自分に都合のよい道徳基準を設ける様子を見て、神は何を感じておられるだろうか。いま私たち信者に期待されていることは、やがて神の裁きが全地を襲うことを思い、今という時を活かして伝道することではないか。私たちに関しては、21 世紀のノアになることを志そうではないか。神とともに歩む人は幸いである。
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