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申命記4:41〜43 (新改訳2017)

41 それからモーセは、ヨルダンの川向こう、すなわち東の方に、三つの町を取り分けた。

42 前から憎んでいたわけではない隣人を意図せずに殺してしまった者が、そこに逃れるためであった。その者はこれらの町の一つに逃れて、生き延びることができる。

43 それは、ルベン人には台地の荒野のベツェル、ガド人にはギルアデのラモテ、マナセ人にはバシャンのゴランであった。

逃れの町

ヨルダン川の東側

この箇所は、モーセの第一の説教と第二の説教の間に置かれた挿入句で、逃れの町に関する規定である。逃れの町は合計6 つあり、その特徴は、民数記35:6 〜34 で詳細に解説されている。ここでは、ヨルダン川の東側にある3 つの逃れの町だけが特記されている。「それからモーセは、ヨルダンの川向こう、すなわち東の方に、三つの町を取り分けた」。ここでヨルダン川の東側にある3 つの町が取り上げられている理由は、これまでにモーセが、ヨルダン川の東側の土地の征服について語っていたからである。
「前から憎んでいたわけではない隣人を意図せずに殺してしまった者が、そこに逃れるためであった。その者はこれらの町の一つに逃れて、生き延びることができる。それは、ルベン人には台地の荒野のベツェル、ガド人にはギルアデのラモテ、マナセ人にはバシャンのゴランであった」。これらの3 つの町は、逃れの町である。過失で隣人を殺した者は、その町に逃れることができる。高原の荒野(ルベン族の所有地、現在のヨルダンのマダバ近辺)にあるベツェル。ギルアデ(ガド族の所有地、現在のヨルダン)にあるラモテ。バシャン(マナセ族の所有地、現在のゴラン高原)にあるゴラン。

申命記5:17 との関係

逃れの町に関する挿入句がここに入るもう一つの理由は、申命記5:17 との関係にある。次章(5 章)に入ると、十戒に関する記述が始まる。その中に、「殺してはならない」(申5:17)という命令がある。ただし、この禁止令には、なんの補足説明もない。逃れの町に関する記述は、申命記5:17 の殺人禁止令に対する重要な補足説明となっている。近代の刑法では、故意による殺人か、過失による殺人(過失致死)かで、罰則の厳しさは大いに異なる。逃れの町の規定は、過失による殺人を犯した者(以前から憎んでいなかった隣人を知らずに殺した殺人者)を、死刑から保護するためのものである。逃れの町に逃げ込んだ者は、正式な裁判を受けるまでの間、手厚く保護された。裁判の結果、過失ではなく、殺意をもって殺人を犯したことが明らかになると、その人は殺人罪で死刑となる。
イスラエルの民に与えられた逃れの町の規定は、イスラエルの神の義と憐みを示すものとなった。新約時代に生きる私たちにとって、逃れの町の規定は、イエス・キリストにある救いを想起させるものである。私たちは、イエス・キリストにあって神の怒りから解放された。主イエスは、私たちにとっての逃れの町である。

年間聖書通読

ヨブ記16〜18、ピレモンへの手紙