1 レアがヤコブに産んだ娘ディナがその土地の娘たちを訪ねようとして出かけた。
2 すると、その土地の族長のヒビ人ハモルの子シェケムは彼女を見て、これを捕らえ、これと寝てはずかしめた。
3 彼はヤコブの娘ディナに心をひかれ、この娘を愛し、ねんごろにこの娘に語った。
4 シェケムは父のハモルに願って言った。「この女の人を私の妻にもらってください。」
5 ヤコブも、彼が自分の娘ディナを汚したことを聞いた。息子たちはそのとき、家畜といっしょに野にいた。ヤコブは彼らが帰って来るまで黙っていた。
6 シェケムの父ハモルは、ヤコブと話し合うために出て来た。
7 ヤコブの息子たちが、野から帰って来て、これを聞いた。人々は心を痛め、ひどく怒った。シェケムがヤコブの娘と寝て、イスラエルの中で恥ずべきことを行ったからである。このようなことは許せないことである。
ついに悲劇が起こる。遠因は、ヤコブがシェケムに留まったことにある。「レアがヤコブに産んだ娘ディナがその土地の娘たちを訪ねようとして出かけた」。(1)ディナはレアの娘で、シメオンとレビは、同じ母から生まれた兄たちである。この2 人は、妹のディナに対して特別な思い入れがあった。(2)この箇所は、イスラエル人の娘がカナン人と交流を持つ最初のケースである。ディナは、天幕を張っている野から町へ行ったが、そこで悪夢のような経験をする。(3)土地の族長のヒビ人ハモルの息子で、シェケムという男がいた(ハモルは、シェケムという都市国家の王である。この町と同名のシェケムは、王家の息子である)。その男が、ディナを無理やり辱めた。彼はディナに心をひかれ、妻にしてほしいと父のハモルに願った。ちなみに、ダビデの息子アムノンが妹のタマルをレイプしたときは(2 サム13:14 ~15)、行為のあとで憎しみが生まれた。(4)ヤコブは、ディナが汚されたことを聞いた(恐らく、ディナに同行した女奴隷からであろう。この時点では、ディナは相手方に監禁されている)。ヤコブは、黙って息子たちの帰りを待った。重要な案件がある場合は、息子たちを決定のプロセスに含めるのが当時の習慣である。
ハモルが、仲介者としてヤコブの家にやって来た。野から帰って来たヤコブの息子たちは、心を痛め、ひどく怒った。「シェケムがヤコブの娘と寝て、イスラエルの中で恥ずべきことを行ったからである。このようなことは許せないことである」。(1)ここには「イスラエルの中で」という言葉が出てくる。これは、イスラエルという言葉が、ヤコブの一家全体を指す最初の例である。この時点で、イスラエルは他の民族から分離した特別な民であるとの意識が、すでに生まれていたのである。(2)イスラエルの中で恥ずべきこと(レイプ)が行われたという認識は、重要なものである。2 サムエル13 章の場合も、タマルは次のように語り、兄のアムノンを諭している。「いけません。兄上。乱暴してはいけません。イスラエルでは、こんなことはしません。こんな愚かなことをしないでください」
主イエスは、「あなたがたは、世界の光です。山の上にある町は隠れる事ができません。…人々があなたがたの良い行いを見て、天におられるあなたがたの父をあがめるようにしなさい」(マタ5:14 ~16)と言われた。その意味を黙想してみよう。
きょうの祈り
天の父なる神さま。あなたの御名をもって呼ばれるようになった私たちは、特別な民です。どうか、私たちの光を人々の前で輝かせることができますように。主イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン。
年間聖書通読
サムエル記第一10~11、ルカの福音書21
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