パウロとバルナバの説教

「これを聞いた使徒たち、バルナバとパウロは、衣を裂いて、群衆の中に駆け込み、叫びながら、言った。『皆さん。どうしてこんなことをするのですか。私たちも皆さんと同じ人間です。･･･』」。（1）バルナバとパウロは、ようやく何が起こっているかを理解した。①ここで再び、「使徒たち」という言葉が使われている。②二人は、衣を裂いた。これは、驚き、悲しみ、落胆、怒りなどの表現である。③彼らは、群衆の中に駆け込み、叫びながら説教を始めた。（2）説教の内容は、異邦人の聴衆を意識したものである。二人は、ヘブル語聖書にもギリシア哲学にも言及していない。天地創造の神を知らない人に、メシアの話はできないからである。そこで、最も基本的な内容を伝えようとした。①自分たちは、皆さんと同じ人間である。②天と地を創造された神は、生ける神である。③その神が、空むなしい偶像礼拝を捨てて、神に立ち返るように招いておられる。④自分たちは、神に立ち返るようにと福音を宣べ伝えている者たちである。
「過ぎ去った時代には、神はあらゆる国の人々がそれぞれ自分の道を歩むことを許しておられました。とはいえ、ご自身のことをあかししないでおられたのではありません。すなわち、恵みをもって、天から雨を降らせ、実りの季節を与え、食物と喜びとで、あなたがたの心を満たしてくださったのです」。（1）福音が伝えられる前の時代の異邦人たちの状態は、どうだったのか。「神は、過ぎ去った時代には、あらゆる国の人々がそれぞれ自分の道を歩むままにしておられました」（新改訳2017）。つまり、神は忍耐深く、時を待っておられたのである。（2）しかし、昔の時代から、神が存在するという証拠は与えておられた。①天からの雨、②実りの季節、③食物と喜び。過ぎ去った時代には、異邦人は神から直接的な啓示を受けていなかったが、一般啓示は与えられていたのである。
「こう言って、ようやくのことで、群衆が彼らにいけにえをささげるのをやめさせた」。二人の説教は、大した効果がなかったようである。ようやくのことで、群衆が彼らにいけにえを捧げるのをやめさせることができただけである。
「自分は神が存在することを知らなかった」という言い訳は通用しない。神は、自然界（一般啓示）を通して、御自身の存在を明らかに示しておられるからである。今は、キリストの福音を受け入れ、神に立ち返る時である。