群衆の反応

パウロが「自分の足で、まっすぐに立ちなさい」と命じると、生まれつき足が動かなかった人が立って歩き出した。それを見た群衆は熱狂した。「パウロのしたことを見た群衆は、声を張り上げ、ルカオニヤ語で、『神々が人間の姿をとって、私たちのところにお下りになったのだ』と言った。そして、バルナバをゼウスと呼び、パウロがおもに話す人であったので、パウロをヘルメスと呼んだ」。（1）この奇跡を目撃した群衆は興奮した。「神々が人間の姿をとって、私たちのところにお下りになったのだ」。群衆はルカオニヤ語で大声で叫んだが、パウロとバルナバには、彼らが何を言っているのかは分からなかった。（2）彼らは、パウロとバルナバに名前を付けた。①バルナバはゼウス。ゼウスは、ギリシアの神々の中の王である。②パウロはヘルメス。ヘルメスは、神の代弁者である。（3）なぜルステラの住民たちは、このような行動に及んだのであろうか。皇帝アウグストの時代に生きたローマ人の詩人オービットが、この地方に伝わる伝説を記録として残している。その伝説の内容は以下のようなものである。①昔、ゼウスとヘルメスが人間の姿を取ってこの地方を訪問したことがあった。②誰も彼らに宿を提供しようとしなかったが、ある老夫婦が彼らを家に迎えた。③その瞬間、老夫婦の家は神殿に変わり、町は破壊された。（4）この伝説を知っていたルステラの住民たちは、先祖と同じ過ちを犯したくなかったので、バルナバをゼウス、パウロをヘルメスとして崇あがめようとしたのである。この時点では、パウロとバルナバには何が起こっているのか分からなかった。
「すると、町の門の前にあるゼウス神殿の祭司は、雄牛数頭と花飾りを門の前に携えて来て、群衆といっしょに、いけにえをささげようとした」。ゼウス神殿の祭司が、いけにえの用意を始めた。①祭司は、パウロとバルナバの前に、いけにえと花飾りを捧げようとした。人々は、パウロとバルナバを神として礼拝しようとしていたのである。②ここでは、迫害よりも危険なことが起こりつつあった。それは、キリストよりも、キリストの福音を伝える僕しもべに関心が向けられる危険性である。
真の神のしもべは、「私を十字架の陰に隠してください」と心から願い、そのように行動する。自分にスポットライトが当たることほど霊的に危険なことはない。私たちの人生を通して、神の栄光が現れるように心から願おう。