パウロの回答

前回は、「恵みが増し加わるために、私たちは罪の中にとどまるべきでしょうか」という疑問がわいてくるという説明をしました。きょうは、その疑問に対するパウロの回答です。
「絶対にそんなことはありません。罪に対して死んだ私たちが、どうして、なおもその中に生きていられるでしょう」（2節）。（1）「絶対にそんなことはありません」というのは、ギリシア語では最も強い否定形で、「メイ・ゲノイト」という言葉です（ロマ3：4、6、31にすでに出ていました）。（2）彼は、私たちは罪に対して死んだのだと言います。死者が、棺桶かんおけを開けて動き出すことはありません。いくら叫んでも、揺り動かしても、死者はこの世の事項には反応しません。それと同じように、罪に対して死んだ人は、罪の影響を受けることはないのです。（3）私たちが死んだと言える理由は、キリストとの一体化があるからです。これについては、次に詳述しょうじゅつします。

キリストとの一体化

「それとも、あなたがたは知らないのですか。キリスト・イエスにつくバプテスマを受けた私たちはみな、その死にあずかるバプテスマを受けたのではありませんか。私たちは、キリストの死にあずかるバプテスマによって、キリストとともに葬られたのです。それは、キリストが御父の栄光によって死者の中からよみがえられたように、私たちも、いのちにあって新しい歩みをするためです」（3 〜 4節）とあります。（1）「それとも、あなたがたは知らないのですか」というのは、「もちろん、知っているはずだ」という意味です。ローマのクリスチャンたちは、教理的にも体験的にも、霊的死と復活を知っていました。（2）「イエスにつくバプテスマ」とは、信じた時に受けた聖霊のバプテスマのことです。バプテスマの基本的意味は、一体化です。聖霊のバプテスマによって、私たちはキリストと一体化させられました。重要なのは、「キリストに起こったことは私たちにも起こった」ということを認識することです。
以下の3点を黙想してみましょう。① キリストは、十字架について死んだ。私たちも死んだ。② キリストは、墓に葬られた。私たちも葬られた。③ キリストは、復活した。私たちも復活した。私たちは、罪に対しては死にました。今の私たちには新しい命があり、新しい歩みがあります。私たちは罪を犯すことはあるかもしれませんが、以前のように罪を犯す必然性はなくなりました。