「なだめの供え物」を公に示した理由は何か

今私たちは、「なだめの供え物」という言葉を通して、義認を別の角度から論じています。今回は、「なだめの供え物」を公に示した理由について考えます。「神は、キリスト・イエスを、その血による、また信仰による、なだめの供え物として、公にお示しになりました。それは、ご自身の義を現すためです」（25節a）。新改訳では、「なだめの供え物として、公にお示しになりました」と訳されていますが、これは良い訳です。
神は、過去の忍耐を示すために、キリストを、なだめの供え物として、公にお示しになりました。「それは、ご自身の義を現すためです。というのは、今までに犯されて来た罪を神の忍耐をもって見のがして来られたからです」（25節b）とあるとおりです。（1）旧約時代の聖徒たちには、罪に対する根本的な解決は与えられていませんでした。いけにえの動物をささげても、彼らの心は空しかったのです。彼らは、翌年になると、また同じ儀式をくり返さねばならないことを知っていました。（2）モーセの律法が命じるいけにえでは、罪の解決にはなりません。いけにえの血は、罪をおおう役割は果たしました。しかし、罪を赦すことはできませんでした。これが、ヘブル人への手紙の中でくり返し語られる内容です。（3）神はこのようにして、旧約時代の聖徒たちの罪を、忍耐をもって見逃して来られました。

今の時のために

神は、今の時に神の義を示すために、キリストを、なだめの供え物として、公にお示しになりました。「それは、今の時にご自身の義を現すためであり、こうして神ご自身が義であり、また、イエスを信じる者を義とお認めになるためなのです」（26節）とあるとおりです。（1）旧約時代の聖徒たちの罪は、キリストが死んだ時に取り除かれました。それまでは、罪が一時的におおわれていただけでした。（2）新約時代の聖徒たちの罪は、信じた瞬間から取り除かれています。神が、イエスを信じる者を義と認めてくださるからです。（3）さらに、神ご自身が義であることが証明されました。単に罪を赦すだけでは、神が義であるとは言えません。罪に対する怒りが静められて初めて、神は義であると言えるのです。そのためには、公にされた「なだめの供え物」が必要でした。
新約時代の信者に与えられている特権がいかに素晴らしいものであるか再認識し、御名をたたえようではありませんか。