警告（14 〜18 節）

（1）モーセは朝、パロの前に立っている。（2）その場所は、ナイルの岸である。パロは、ナイルに出て来ていた。ナイルなしにエジプトに命はない。当時のエジプト人たちは、ナイルを「エジプトの母」として礼拝していた。パロが朝ナイルに出て来たのは、朝の黙想のためだったと思われる。（3）モーセは杖を持ってパロに警告した。ナイルの水が血に変わり、「あなたは次のことによって、わたしが【主】であることを知るようになる」というのである。水が血に変わるとは、いわゆる赤潮のことであろう。自然現象として発生する赤潮が、このタイミングで極端に強く現れるのである。その結果、ナイルの魚は死に、ナイルは臭くさくなる。また、エジプト人はナイルの水を飲むことを忌いみ嫌きらうようになる。

実行（19 〜21 節）

（1）ここでの動作の主体は、アロンである。アロンが杖を差し伸ばすと、水が血に変わった。（2）その被害は広範囲に及び、イスラエル人たちも同じ害を受けた。（3）「木の器や石の器」とは、偶像に捧げ物をするための器である。そこにも血があるようになった。これは偶像への裁きである。（4）モーセとアロンが、【主】の命令どおりに行うと、ナイルの水はことごとく血に変わり、魚は死に、ナイルの水は臭くなった。その結果、エジプト人は、ナイルの水を飲むことができなくなった。
この災いが下った時期は、10 月から11 月にかけての頃だと推測される。エジプトの農業は、ナイル川に全面的に依存していた。ナイル川の増水は、毎年定期的にやって来た。これは私たちが知っている洪水のような増水ではない。徐々に水位が増し、最終的には川幅が8 倍にもなった。川の氾濫はんらんにより、土壌に堆積たいせきした塩分が流され、上流からは肥沃ひよくな土壌が運ばれて来た。増水は、例年7 月中旬から始まり、3 か月後には水が引き始める。水が引くと、種を蒔く時期になる。第一と第二の災いは、ナイルが増水し、その水が引いて行く時期に行われたのであろう。第十の災いは春にやって来るので、エジプトに下る10 の災害は、6 か月という時間をかけて起こったことが分かる。
信仰の危機を乗り越え、神の計画に沿って動き出したモーセは、神の計画に参加する喜びを味わったことであろう。そして、私たちにも、神の計画に参加する喜びが与えられている。神の栄光のために、自分自身を捧ささげよう。偶像に信頼する者は辱はずかしめを受け、【主】に信頼する者は祝福を受ける。