5 イエスがカペナウムに入られると、ひとりの百人隊長がみもとに来て、懇願して、
6 言った。「主よ。私のしもべが中風で、家に寝ていて、ひどく苦しんでいます。」
7 イエスは彼に言われた。「行って、直してあげよう。」
8 しかし、百人隊長は答えて言った。「主よ。あなたを私の屋根の下にお入れする資格は、私にはありません。ただ、おことばを下さい。そうすれば、私のしもべは直ります。
9 と申しますのは、私も権威の下にある者ですが、私自身の下にも兵士たちがいまして、そのひとりに『行け』と言えば行きますし、別の者に『来い』と言えば来ます。また、しもべに『これをせよ』と言えば、そのとおりにいたします。」
10 イエスは、これを聞いて驚かれ、ついて来た人たちにこう言われた。「まことに、あなたがたに告げます。わたしはイスラエルのうちのだれにも、このような信仰を見たことがありません。
11 あなたがたに言いますが、たくさんの人が東からも西からも来て、天の御国で、アブラハム、イサク、ヤコブといっしょに食卓に着きます。
12 しかし、御国の子らは外の暗やみに放り出され、そこで泣いて歯ぎしりするのです。」
13 それから、イエスは百人隊長に言われた。「さあ行きなさい。あなたの信じたとおりになるように。」すると、ちょうどその時、そのしもべはいやされた。
カペナウムは、ガリラヤの領主ヘロデ・アンテパスの所有地である。その町には、異邦人の軍隊が駐屯していた。その部隊の百人隊長がみもとに来て、イエスに懇願した。「主よ。私のしもべが中風で、家に寝ていて、ひどく苦しんでいます」。当時は、しもべ(奴隷)というのは主人の所有物で、取替えがきくものであった。この百人隊長は、社会的価値が低いしもべのために労を取っている。彼が、人格的に非常に優れた人物であったことが分かる。
(1)ルカ7:1 ~10 によれば、彼はユダヤ人の長老たちをイエスのもとに送ったことになっているが、マタイの記事とルカの記事の間には、矛盾はない。ユダヤ的な理解では、主人の名によって送られた使者は、主人が直接来たのと同じだとみなされたからである。(2)この百人隊長は、ユダヤ人を愛する異邦人であった。アブラハム契約の条項からすると、彼は神の祝福を受けるに値する人物なのである(創12:3 参照)。(3)イエスは、「行って、直してあげよう」と言われたが、百人隊長は、自分にはその資格がないと告白している。その謙遜な態度に注目しよう。(4)彼は、軍隊での経験から、権威ある者の言葉には力があることを知っていた。それでイエスに、「ただ、おことばを下さい。そうすれば、私のしもべは直ります」と答えたのである。彼は異邦人でありながら、イエスにはメシアとしての権威が備わっていることを信じていた。ユダヤ人の指導者たちがイエスのメシア性を疑っていた時に、異邦人の彼がイエスをメシアだと受け入れていたのである。これは、驚くべき信仰である。
イエスは百人隊長の信仰を見て、それを称賛された。(1)彼のような信仰は、神の民イスラエルの中にさえ見たことがない。(2)彼は、救いを受ける異邦人の先駆となる。神の国(千年王国)では、救われた異邦人たちが全世界から集められ、イスラエルの族長たちとともに祝宴の席に着く。(3)しかし、「御国の子ら」(パリサイ人たちは自分たちのことをそう呼んでいた)は、その祝福からは除外される。(4)そしてイエスは、百人隊長のしもべの癒しを宣言された。ちょうどその時刻に、そのしもべは癒された。百人隊長が願ったとおりになったのである。
イエスの権威を認める人は、幸いである。イエスのことばに絶対的な信頼を置く人は、幸いである。きょうもイエスの権威に従おうではないか。
きょうの祈り
イエス・キリストの父なる神さま。私は主イエスの権威の下におる者です。どうか私に、おことばを下さい。そのとおりに致します。主イエス・キリストの御名によって祈ります。アーメン。
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