ヤコブの準備

エサウが400 人を引き連れてやって来るという報告を聞いたヤコブは、兄が復讐のために来るのではないかと恐れた。そこで彼は、早速対策を講じた。彼は、自分の持ち物を2 つの宿営に分けた。先のものが打たれても、残りのものは助かるだろうと考えたからである。いかにもヤコブらしい対応である。
次に彼は、祈りによる準備をした。（1）「私の父アブラハムの神、私の父イサクの神よ」と呼びかけた。これは、アブラハム契約を意識しての祈りである。（2）彼は、自分が故郷に帰る理由は、神がそう命じたからだと訴えた。つまり、神の命令に従っているのだから、守っていただきたいということである。（3）さらに、過去に与えられた恵みを思い起こし、取るに足りない自分が裕福な者とされたことを感謝した。これは、謙遜な祈りである。（4）彼は、兄エサウの手から救い出されることを願った。「わたしは必ずあなたをしあわせにし、あなたの子孫を多くて数えきれない海の砂のようにする」との約束を持ち出して、その成就を神に迫った。この約束のことばは、彼がベテルで聞いたものである（創28：13 ～15）。

贈り物

（1）翌朝ヤコブは、兄エサウへの贈り物を選んだ。・ 雌やぎ200 頭、・ 雄やぎ20 頭、・ 雌羊200 頭、・ 雄羊20 頭、・ 乳らくだ30 頭とその子（30 頭）、・ 雌牛40 頭、・ 雄牛10 頭、⑧ 雌ろば20 頭、⑨ 雄ろば10 頭。贈り物の総数は、580 頭にもなった。これは、ヤコブの財産の一部である。彼は、裕福になっていたのである。（2）これらの家畜を群れごとに前進させ、長く続く贈り物によって、兄エサウを感動させるのが作戦であった。「ヤコブは、私より先に行く贈り物によって彼をなだめ、そうして後、彼の顔を見よう。もしや、彼は私を快こころよく受け入れてくれるかもわからない、と思ったからである」
しかし、これほどの準備をしても、ヤコブの不安が去ることはなかった。なだめの供え物によって和解を達成しようとするのは、きわめて人間的な方法である。そして、私たちはそのような過ちを犯しやすい者である。人間的な方法を神との関係に持ち込むと、「わざによる救い」を教える宗教ができ上がる。聖書は、「信仰と恵みによる救い」を教える。神との和解は、神からのプレゼントである福音をそのまま受け取ることによって達成される。信仰がなければ、神を喜ばせることはできない。神の愛と赦しを信じる者は幸いである。