エジプトへの帰還

ハガルはエジプトに戻ろうとして、ネゲブとシナイ半島の境界線のあたりをさ迷った。その彼女に、【主】の使い（受肉前のメシア）が現れた。（1）【主】の使いは、2 つの質問をした。「あなたはどこから来て、どこへ行くのか」。ハガルは、最初の質問にだけ答えた。「私の女主人サライのところから逃げているところです」。おそらく、行き先が見えずにさ迷っていたのであろう。（2）【主】の使いは、「アブラムの家に帰れ。サライを見下してはいけない。いじめられても、謙遜けんそんに彼女に仕えよ」と命じた。（3）【主】の使いは、ハガルに預言を与えた。①「あなたの子孫は、わたしが大いにふやすので、数えきれないほどになる」。族長たちは同様の約束を受けたが、女性でこの約束を受けたのはハガルだけである。②「見よ。あなたはみごもっている。男の子を産もうとしている。その子をイシュマエルと名づけなさい」。子どもの性別が預言され、その子の名まで指定された。イシュマエルとは、「神は聞かれる」という意味である。彼は、誕生前に神によって名が与えられた最初の例となった（創17：19 のイサク、マタ1：21、ルカ1：31 のイエス、ルカ1：13 のバプテスマのヨハネなど参照）。③ イシュマエルという名が与えられた理由は、「主があなたの苦しみを聞き入れられたから」というものであった。

イシュマエルの性質

（1）「野生のろばのような人になる」とは、批判的な言葉ではなく、荒野を渡り歩く遊牧民となるという意味である。（2）「その手は、すべての人に逆らい」とは、他民族と遭遇そうぐうした時には、攻撃的な性格を示すという意味である。（3）「すべての人の手も、彼に逆らう」とは、攻撃された側が報復攻撃を仕かけてくるということである。1948 年のイスラエル建国以降の歴史は、この通りに動いている。アラブ人によるイスラエルへの攻撃と、イスラエルの側の報復が、際限なくくり返されている。（4）「彼はすべての兄弟に敵対して住もう」。これは、弟のイサクと隣り合って住むが、平和的にではなく、敵対心を持って住むという意味である。（5）ハガルは、【主】の使いが神ご自身であることを認識し、その方の名を「エル・ロイ」と呼んだ。「ご覧になる神」という意味である。ハガルの窮状きゅうじょうに目を留められた神は、私たちの歩みの上にも目を注いでくださる。人生の方向性が見えなくなったときには、「エル・ロイ」なる神に呼びかけ、知恵をいただこうではないか。