第2 のたとえ話

イエスは、祭司長と長老たちの質問に対して3 つのたとえで答えたが、この箇所は、その2 番目である。（1）「家の主人」は、父なる神である。主人は、垣を巡らし、やぐらを建て、ぶどうを絞しぼるための酒ぶねも用意し、それを農夫たちに貸して旅に出た。（2）「ぶどう園」は、イスラエルの民である。主人が多くの収穫を期待したように、神もイスラエルの民から多くの霊的収穫を期待しておられる。（3）「農夫たち」は、民の指導者たちである。彼らは、主人が送って来るしもべたちをつかまえて、ひとりは袋だたきにし、もうひとりは殺し、もうひとりは石で打った。（4）主人は、多くの別のしもべたちを遣わしたが、彼らもまた農夫たちから同じ扱いを受けた。「しもべたち」は、神から遣わされた預言者たちである。歴史上、神は3 度にわたって預言者たちを遣わされた。① 捕囚ほしゅう期前預言者、② 捕囚期後預言者、③ バプテスマのヨハネ。（5）主人は最後に、自分の息子を遣わした。「息子」は、イエスである。しかし、農夫たちはその息子さえも殺してしまった。

たとえ話の適用

「ぶどう園の主人が帰って来たら、その農夫たちをどうするでしょうか」。指導者たちは、「その悪党どもを情け容赦なく殺して、そのぶどう園を、季節にはきちんと収穫を納める別の農夫たちに貸すに違いありません」と答えた。そこでイエスは、次のことを預言する。（1）イエスは、家を建てる者（指導者）たちからは見捨てられた石であるが、その石が「礎の石」となる（詩118：22 の預言）。（2）神の国はその時代のユダヤ人たちからは取り去られ、「神の国の実を結ぶ国民」（43 節）に与えられる。「神の国の実を結ぶ国民」を「教会」と解釈する人がいるが、これは置換神学の立場である。聖書で「教会」を「国民」と呼ぶ例はない。むしろこれは、別の時代のユダヤ人たちと解釈すべきである。つまり、メシア的王国は、その時代のユダヤ人たちからは取り去られるが、後の時代のユダヤ人たち（特に患難かんなん時代を生き延のびるユダヤ人たち）に与えられる、という意味である。（3）イエスに敵対する者たちは、粉みじんに滅びる。この預言は、紀元70 年にエルサレムが滅びた時に成就した。
ユダヤ人であっても異邦人であっても、イエスに敵対する者は自みずからを破滅はめつに追い込むことになる。イエスに対する信仰が与えられたことを感謝すると同時に、イエスに敵対している人たちの救いのために涙して祈ろうではないか。