パロの命令の実行

パロの命令に従って、ヨセフは兄たちに車と食糧を与え、さらに、晴れ着をめいめいに与えた。それは、兄たちへの敬愛のしるしとなった。「晴れ着」とは「着替え着」とも訳せる言葉である。特別な時に着用する豪華な衣服であるが、それぞれに2 着ずつ与えられたのであろう。これには、ヨセフの権勢をカナンの地にいる家族に伝えるという目的もあった。つまり、エジプトに来たなら、このようなものが用意されているという意味である。
ここでヨセフは、ベニヤミンを特別扱あつかいしている。ヨセフにとっては、ベニヤミンは同じ母から生まれた弟である。彼に、銀300 枚と晴れ着5 着が支給された。また、父への贈り物も用意された。エジプトの最良の物を積んだ10 頭のろば、そして穀物とパンと、父の道中の食糧を積んだ10 頭の雌ろばが、それであった。

兄たちへの忠告

カナンの地に帰ろうとする兄たちに向かって、ヨセフは、「途中で言い争わないでください」と忠告した。（1）ヨセフを売ったことに関して、お互いを責せめ合い、憎しみの感情を育てるようなことをしないようにという忠告である。（2）この忠告には、優先順位を考えなさいという意味が込められている。何よりも、父を連れてエジプトに移住することが最優先されるべき課題なのである。優先順位を間違えると、人生は混乱したものとなる。（3）ヨセフの兄たちは同じ父の息子たちで、ヨセフが共通の兄弟でもある。彼らは同じように罪人であり、同じ赦しを受けた者たちである。さらに、同じ場所に移住しようとしている。言い争う理由は、何もないのである。
ヨセフの言葉と主イエスの言葉には、相関関係がある。主イエスは、「あなたがたに新しい戒いましめを与えましょう。互いに愛し合いなさい。わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛し合いなさい」（ヨハ13：34）とお命じになった。私たちクリスチャンには、地上での寄留者として優先させるべきことがある。それは、主イエスの「愛の命令」を実行することである。私たちはみな罪人であったが、同じ救いを受け、同じ神を礼拝する者とされた。また、同じ場所に向かって地上生涯を歩んでいる。それを考えるなら、クリスチャン同士の対立や競争は、あり得ないことである。主イエスの「愛の命令」を十分に実行できていないことを、父なる神の御前で告白し、赦しと新しい視点をいただこう。